大学生の頃、私、貧乏学生だったものですから、ほぼ毎日、京都・木屋町のカラオケスナックでバイトをしていました。社会人のお客さんが多かったので、私はカウンターの中で、社会勉強をしていた感じです。
ある日、3人の美女が来店しました。いわゆる常連さんで、何度となく話をしたことがあります。とても楽しく飲んで歌っていて、男性のお客さんの視線は彼女たちに集中。店全体がとてもいい雰囲気に包まれていました。そして、そのうちの1人、Aさんが歌ったのが、当時とても人気のあった杏里さんの『悲しみがとまらない』です。
さて、ちょっと思い出してみてください。出だしの「I Can't Stop!The Loneliness~」の音の入りは、「悲しい」というよりは明るいイメージがありませんか? そのせいか、この部分を「I Can't Chop!(チョップ)」と歌うのが何故か流行っていたんです。ごくごく限定的な人たちにだけかもしれませんが…… もちろん「チョップ」は、いわゆる空手チョップのことで、ご存じ、力道山やジャイアント馬場さんの得意技です。それで、Aさんのカラオケに合わせて従業員が空手チョップの動きをしたところ大うけして、彼女たちは、大笑いしながら何度もチョップを繰り返していました。
後日、3人のうちの2人が来店しました。すると、Bさんの手に包帯が…… そして、いきなり「恨むわよ~(笑いながらです)」とのセリフ。何のこっちゃと思いつつ、こわごわ聞いてみると、あの日、帰りの京阪電車の中で調子に乗って「I Can't Chop!」をやっていたら、なんと鉄製の棒を直撃。もちろん、棒を倒すことなどできるはずもなく、小指にヒビが入ってしまったそうです。私は、ヒビが入っているのに飲みに来るBさんの根性に敬意を表し、つつしんで水割りを作らせていただきました。悲しみではなく、笑いが止まらない1日でありました。Bさん、ネタにしてごめんなさい。
悲しみがとまらない
作詞:康珍化
作曲:林哲司
編曲:角松敏生・林哲司
発売:1983年(昭和58年)11月5日
杏里の代表曲。レコード盤に加え、1988年には登場したばかりのCDシングル盤も発売された。前作「CAT'S EYE」に引き続きオリコンでベスト10位入りし、連続して大ヒットとなる。2008年11月5日には、稲垣潤一&小柳ゆきのデュエットによるカヴァーもリリースされた。
2016.01.07
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