すみません、前回からの続きです。そう、真っ黒なゴミ袋をかぶってプリンスのバットダンスを踊った奴、名前はヒラタくんという。彼は1学年下の後輩で目白に住んでいた。僕はよく彼のアパートに押しかけて、彼の薦める(普段あまり僕が耳にしないような)レコードを聴いて過ごしていた。音楽の趣味が合うんだか合わないんだかみたいな感じだったけど、そのおかげで音楽ジャンルへのアレルギーは無くなったかな。
ヒラタくんに関する逸話は数限りなくあって、もはや何かのキッカケがないと思い出せないけど、僕の大学生活の25%はヒラタくんが占めていたんじゃないかと思うくらい、相当に楽しかった。ヒラタくんはヒップホップが大好きで、Run-DMCやLL Cool Jはもちろん、ビースティボーイズとか、いとうせいこうのタイニーパンクスなんかも大のお気に入りだった。まだスチャとかが出てくる前の話しだ。当時の一般的な感じから言えば、相当トンガってたんだよなあ。
セルフレームの黒縁メガネをかけて、長身で細身のルックス。一見知的にも見える彼だったが、その一挙手一投足はあまりにも不審極まりなかった。一言で言うと、体の動きが「カクカクしているのにくねくねしている」のである。なんだろう、コマ落としの映像みたいな動きにもかかわらず、尺取り虫のようなうねうねさというか… あっ、そうそう、後年発売されたフラワーロック(音楽に合わせて踊る花のオモチャ)になんとなく似ていた気がする。うーん、僕の説明も破綻しているなあ。
そんな挙動不審な動きをするヒラタくんが、BPM135もあるプリンスのバットダンスを踊りまくるのだ。黒いビニールのゴミ袋をかぶり、それをコウモリの羽に見立て、バタバタと羽(腕)を振りまくるのだ。ステップなんて我流そのもの。プリンスのビデオを再現しようなんて気はさらさらなく、あっち行ったりこっち行ったりしながら「カクカク、くねくね、バタバタ」と踊りまくった。筆舌に尽くしがたいとはまさにこのことで、僕の爆笑ベストテンには常にハイスコアでランクインしている。あんなに腹を抱えて笑ったことなんて10年に1度あるかないかレベル。
そんなヒラタくんとも久しく会っていない。実家の岡山に帰ったと聞いてからもう20年近く経つだろうか。プリンスのLP持って訪ねてみようかな。
2016.03.23
YouTube / R!ck
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