1983年5月のこと。
『EACH TIME』というタイトルになるらしい大滝詠一のニューアルバム発売決定の告知ポスターが、行きつけのレコード店のウィンドウに貼られていた。学校帰りにそれを目にした自分は即、お店に飛びこむ。
なにしろ企画盤の『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』から1年、オリジナルアルバム『A LONG VACATION』から2年が経過していた。高校生には十分に長い時間だ。
「7月21日に出るらしいよ」
お店のお兄さんから教えてもらい即、予約。夏の楽しみが、ひとつ増えたと思った。
が、それはひと月ほどで落胆に変わる。ウィンドウに貼られていたあの告知ポスターが突然、消えた。
気になってお店に入り、お兄さんに尋ねたところ、「延期になって、いつ出るかわかんないんだよ」との返事が。“マジすか!?” というガッカリ感が、おそらく自分の顔に出ていたのだろう。お兄さんは「よかったら、これ持っていって」と、ウィンドウから消えた告知ポスターをくれた。
ただでさえ待たされたのに、このままではナイアガラ禁断症状になる… ので、持っていなかったバックカタログ『ナイアガラ・カレンダー』を購入。これをひたすら聴き続けて秋になった。
お店のお兄さんに「いつ出るんすか?」「決まりました?」と尋ね続けた。今思うと迷惑な客だったなあ。いや、俺が悪いんじゃない、ロング過ぎるバケーションをとった大滝が悪いんだ!
ーー 1984年3月21日にリリースされた待望の『EACH TIME』は想像以上にド派手なアレンジが利いた快作だ。待った甲斐があった。レコーディングの舞台裏が明かされた今では、発売延期の理由が “バケーション” ではなかったことも理解している。
が、そんな事情を知らずに悶々としていた当時のことを、実家の自室に今も貼られている告知ポスターを帰省の度に目にしては、つい思い出してしまう。
2016.02.22
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