あらかじめお断わりしておきますが、この話は、決して京都の伝統・風習を誹謗中傷しようというものではありません。私の実体験であり、あくまでも個人的な楽しい(もしくは、やっかいな)出来事として記憶しているものです。
京都・木屋町のスナックで働いていると、いろいろな人に出会います。私の場合、幾人かの舞妓さんとお知り合いになりました。最初はお客さんに連れてこられたと思うのですが、そのうちに、彼女たちがプライベートで飲みに?来るようになったのです。そう彼女たちは10代ですから、本来、酒はマズイのでしょうが、それは京都の風土が許していたのでしょう。
彼女たちは、意外にも京都以外の地方の出身が多く、見習い期間を経て座敷に上がるようになっても修行を繰り返し、多くの場合、20歳前後には芸妓になります。何事も少しずつなのです。ですから、抱えるストレスは多いでしょうし、しかも若いですから、休みの日は大爆発することもあるのです。
私がよく話をしたのは、「豆○」という名の舞妓さん。具体的な文字を書くと、諸方面に問題があるかもしれないので、ここでは「○」にさせていただきます。豆○は、私やチーフと歳が近いせいもあり、よく来ていました。
と、ここまでは普通の話。
でもね、来たら来たで、とてもやっかいなのです。日頃のうっぷんを晴らそうというのかカラオケを歌いまくる。そして、歌い終わる前に「次の曲はこれ」と指示します。ほかのお客さんが歌うことはできない雰囲気です。
しかも、席にジッとはしていません。マイクのコード(この頃、ワイヤレスは無かったですね)を引っ張り、店中を動き回って、ほかのお客さんにもガンガン絡もうとする。ひどいときには、ボックス席のテーブルの上でワンマンショー。ついでにそこから落ちたりして、救急車を呼びかけたこともあります。で、歌唱力があれば良しなのですが、これが、とてもじゃないけど… という美声です。
しかし、ここで彼女の名誉のために申しましょう。この世界には「をどり」と呼ばれる公演があります。春・秋に定期開催されており、一般のお客さんに対して舞を披露するものです。お客さんが会場に入ると、観客席に移動する前に別室でお茶とお菓子が振る舞われます。このとき、舞妓さんが一人ずつ交代でお茶をたてるのですが、数百人を前にしていますから大役と言えると思います。
そして私たちは、豆○の順番の日には、必ず観に行くようにしていました。すると、やはりプライベートのときとは全く別人です。仕事のときは、とても美しく、その姿には気品があります。目が合うと軽く挨拶してくれて、何となく雅な気持ちになるのです。
さて、豆○がテーブルから落ちた曲は、中原めいこさんの「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」。今では、どうしているかわかりませんが、相変わらず大爆発しているとうれしいですね。ちなみに「君たちキムチ・ビビンバ・クッパだね」と歌って落ちました。残念。
君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね / 中原めいこ
作詞:中原めいこ, 森雪之丞
作曲:中原めいこ
編曲:新川博
発売:1984年(昭和59年)4月5日
2016.11.16
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