初めて彼女たちを見たのは、1981年頃、ファン・ボーイ・スリーと共演した「リアリー・セイング・サムシング」のPVだったか。キュートでちょっとパンキッシュ、UK三人娘が力まず歌ってます。そんなゆるっとした感じが新鮮に映ったのがバナナラマだ。
クールなクリッシー・ハインド。パワフルなアニー・レノックス。スタイリッシュなシャーデー。80年代前半、英国にはカッコいい女性シンガーがたくさんいた。だが、彼女たちはカッコよすぎる。あこがれはするが、あんな風にはなれそうもない。
それに対し、バナナラマに感じたのはあこがれよりも親近感だ。くしゅくしゅツンツンヘアーに真っ赤なリップ、ボーイッシュなスタイル。写真やPVの彼女たちには、真似したくなる要素がいっぱい。ロンドンの普通の女の子代表みたいなカレン、シボーン、サラを見てると、このくらいならなれそうと十代だった私は図々しくも思った。
中でも好きだったPVが「クルーエル・サマー(ちぎれたハート)」だ。オーバーオール姿の三人がかわいくて、私もアルバイト代でよく似たオーバーオールを買ったっけ。淡々としたクールなボーカルも好きだった。ポップだけどちょっと乾いた曲調にハマっていた気がする。
1984年、当時の英国人気スター勢ぞろいのバンドエイドにも、バナナラマは参加していた。「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」のPVを見ると、女性シンガーはバナナラマとジョディ・ワトリーだけ。だが、雛壇で全員大合唱のときには、最も目立つ前列にいるのに、ソロパートはもらえていない。まあ、上手いシンガーだらけのあの中じゃね。歌より画(え)的に必要だったんだろうな、となんとなく想像はつく。
だが、1986年、三人娘は大きな変貌を遂げる。ストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)のプロデュースによる「ヴィーナス」が大ヒット。その後もこの路線でヒットを連発。ユーロビートのバナナラマとなり、私は一気に興味を失った。私が好きだったのは、チャカチャカ音ユーロビートのスターでなく、淡々と乾いたポップソングを歌う、ロンドン娘だったから。
ストック・エイトキン・ウォーターマン以前のPVを見ると、あぁかわいいと今でも胸がきゅんとする。同時に、バナナラマになりたいと思っていた十代の自分を思い出し、ちょっと恥ずかしくなったりもするのだ。
2016.07.04
YouTube / London Recordings
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