3月25日

みゆき主題歌「想い出がいっぱい」原作の世界観とぴったり合った H2O の声質

40
0
 
 この日何の日? 
H2Oのシングル「想い出がいっぱい」リリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1983年のコラム 
魅惑の中森明菜、その歌にはいつだって「彼女らしさ」があった

中森明菜「ファンタジー〈幻想曲〉」痛みを引き受け、分かち合い、癒してくれる歌

爺爺トップなんかじゃないぜ、我が道を行くZZトップ!

村田和人の名曲、33年の時を経て「一本の音楽」がつないだもの

厳選シティポップ!カセットテープで聴くドライブソング「夏のシーサイド」編

僕たちムーンウォーカー世代、マイケルとブルース・リーが神だった

もっとみる≫




あだち充の代表作のひとつ「みゆき」


『みゆき』(少年ビッグコミック1980年17号~1984年18号)の連載が始まった当時、中学校へ入学したばかりの僕は、早生まれだったためまだ12歳で、その時は本当に純朴な少年だった。

初めてその漫画に触れたとき、柔らかく繊細なタッチで主人公やヒロインが描かれているのにときめき、モデル誌ばりに私服の多彩さが表現されているのに衝撃を受けた―― そう、それはまだ当時の少年漫画誌では珍しい画風だったと記憶している。ちょっとしたヒロインの目線や仕草など、その美しさとかわいらしさを目の当たりにした僕は、問答無用で心を奪われてしまったのだ。

さて、今回のコラムは漫画家あだち充の代表作のひとつ『みゆき』と、アニメ版放送時のエンディング曲「想い出がいっぱい」について語ってみたい。

刺激的過ぎた鹿島みゆきと若松みゆき


問答無用で心奪われてしまったのには他にも理由がある。男子目線ばかりで怒られそうだが、それはサービスカットの質と量に他ならない。

まだ12歳である… 中学生になったばかりの僕は、ブカブカの学ランに身を包む少年だった。笑われそうだけど、その頃はテレビで再放送していた『ど根性ガエル』(作・吉沢やすみ)のヒロイン京子ちゃんのパンツが露わになるシーンだけでグッときてしまう純情ぶりであった。周りの同級生も似たり寄ったりで、みんな奥手だったのは言うまでもない。ただ、そんな純真無垢な僕らにとってあだち充の描く女性は刺激的過ぎたのである。

ふたりのみゆき―― 主人公である若松真人の同級生でありクラスのマドンナ的存在の鹿島みゆきと、6年ぶりに真人の前に現れた超絶かわいい妹の若松みゆき。そのふたりのヒロインに対し、作者のあだち充はいとも簡単にセクシーなポーズをさせるのだ。前かがみの艶めかしいポーズとその脚線美… ビキニから覗く谷間や、ウエストからヒップラインに至るくびれと丸み、水着のパンツを直す仕草とそこからこぼれ出る “ハミ肉”、ほぼ毎回出現する着替えのシーンやパンチラなどなど、いたいけな中学生男子の欲望をこれでもかと刺激するのだから堪らない。ホント罪作りな漫画家である。

緩やかな物語の流れが逆に新鮮? あだち充が描く「みゆき」の世界


さて、この『みゆき』を描いたあだち充は、1969年から石井いさみ(『750ライダー』で有名ですネ)のアシスタントを経て1970年に漫画家デビュー。しばらくは漫画原作者と組んだ作品を中心としていたがヒットに恵まれず、幼年誌や少女誌などに活路を見出そうと試行錯誤する日々を送っていた。ただ、1978年に週刊少年サンデー増刊号に連載を始めた『ナイン』が当たったことにより、その後トントン拍子で彼を取り囲む世界が変わっていく。

1980年に週刊少女コミックで連載を始めた『陽あたり良好!』がヒット、時同じくして月2回刊の少年ビッグコミック(後の週刊ヤングサンデー)に連載を始めた『みゆき』によって、日本中の中高生男子を虜にした。そして翌年、週刊少年サンデーに『タッチ』の連載を始めるころには、人気漫画家として不動の地位を築いていたのである。

当時の少年誌は、ギャグ漫画やスポーツ漫画、不良っぽい学園闘争物など、暴力シーンの際立ったものや、矢継ぎ早に繰り出されるギャグのスピード感が重視されていたと思う。けれど、こと『みゆき』に関しては何とも緩やかな物語の流れを作っていて、それが逆に読者へ新鮮さを与えたのかもしれない。

あだち充は、本編の途中で擬音も何もないただ風景だけを数コマ挿入することで、読者にゆるやかな時間経過を想像させる手法を多用する。これが物語全編の緩急にとても影響していて “のほほん” とした雰囲気の作風にひと役買っているのだ。また、作中にちょくちょくあだち充自身(サンバイザーに眼鏡姿)が登場しては、平然と作品に対する弁解や宣伝を行なうメタフィクションという手法も用いた。これもまた、あだち充作品の醍醐味であろう。この独特な作風が、『みゆき』本編のムフフ展開と並行するシリアス設定(ふたりの母親を亡くした真人と、血のつながらない妹のみゆき)の緩衝材になっているのだ。

さて、1983年3月から1984年の4月まで、およそ1年をかけて放送されたアニメ版『みゆき』も最高だった。原作が連載中ということで若干の手直しがあったもののアニメ化は成功した。そのエンディング曲を歌ったことにより、昭和の歌謡史に爪痕を残したグループがいる。赤塩正樹と中沢賢司のふたりによるフォークデュオ、H2Oだ。

赤塩正樹と中沢賢司のフォークデュオH2Oが歌う「想い出がいっぱい」


H2Oのふたりは、1980年に薬師丸ひろ子主演映画『翔んだカップル』の挿入歌「ローレライ」でデビュー、TV版『翔んだカップル』のエンディング曲「僕らのダイアリー」で美しいハモりを決め、同曲をスマッシュヒットに導いた。

ただ、「僕らのダイアリー」は来生姉弟から提供された曲であり、彼らは自分たちの曲で勝負したかったはずだ。しかし、いかんせん彼らが作った曲では打破できない壁が立ちはだかる… 彼らは低迷した。そんな彼らのために事務所は「想い出がいっぱい」(1983年3月リリーズ)を用意した。座組は阿木燿子と鈴木キサブローという人気絶頂のプロ作家である。ただ、アニメのタイアップも付いているというこのお膳立てで失敗したら、彼らに次はないという条件だ。

背水の陣で挑んだ彼らだったが、杞憂することなく同曲はヒットチャートを駆け上り、そして結果を出すことに成功した。

 古いアルバムの中に 隠れて
 想い出が いっぱい
 無邪気な笑顔の 下の
 日付は 遥かなメモリー

原作の世界観と彼らの透明感溢れる声質はぴったりと合い、歌詞の内容もメロディも申し分なかった。「想い出がいっぱい」は最高の出来だったのだ。さすがプロの仕事である。

H2O解散後も歌われ続ける名曲


同曲は、歌詞の内容から学校の卒業式で歌われる機会が多いという。それは1993年以後、中学校や高校の音楽の教科書に掲載されたことが大きく影響しているだろう。この曲は昭和史を代表する曲のひとつとして、中学校や高校の合唱コンクールや卒業式で今も歌われ続ける名曲へと成長を遂げたのだ。

 大人の階段上る 君はまだシンデレラさ
 幸せは誰かがきっと
 運んでくれると信じてるね
 少女だったと いつの日か
 思う時がくるのさ

フォークソングの全盛期は1970年代である。多くのフォーク歌手が世を席巻していたが、1980年代になると影をひそめ、チャゲ&飛鳥も、アルフィーも、みんなロックを上手に取り入れた楽曲作りに重心を移動させていた。

頑なに自分たちのポリシーを信じていただろう雅夢を代表する1980年代にデビューしたフォークグループの多くは、解散に追い込まれたり低迷するしか道がなかった。1990年代の後半、ゆずや19がデビューするまで、フォークグループは苦汁を飲むしかなかったのだ。“一発屋” とカテゴライズされるH2Oの彼らは、時代に便乗することを善しとしなかった。それは彼らのプライドでもあろう。ただ、時代とは欺くしも残酷である。

1985年、H2Oの彼らは解散を決め、別々の道を進みはじめた。それはまるで『みゆき』の最終話のようでもある。

原作最終話でも描かれた「想い出がいっぱい」


原作の最終話。それぞれの登場人物が、それぞれの想いと覚悟を持って日常に解き放たれていくシーン… 実に印象的だ。

「ま、たまにはいいか… ちょうど秋だしネ」
「大人になるには必要な季節だよ」

と、落ち込む竜一に掛ける母親の言葉もまた良い。

妹の若松みゆきに想いを寄せていた登場人物のひとり、竜一が聴いていたレコードは『みゆきのLovelyコレクション』(1983年12月リリース)である。もちろんこれは、メタフィクションであり、作者あだち充からの “真面目なサービスカット” である。そして、このシーンで聴いている曲こそ「想い出がいっぱい」なのだ。

流れる歌詞に身を任せて、それぞれが想うふたりの幸せがゆっくりと描かれていく…。

 キラリ木洩れ日のような
 まぶしい想い出がいっぱい
 ひとりだけ横向く記念写真だね
 ガラスの階段降りる
 ガラスの靴シンデレラさ
 踊り場で足を止めて
 時計の音 気にしている
 少女だったといつの日か
 想う時がくるのさ
 少女だったと懐かしく
 振り向く日があるのさ
 (原作本文ママ)

そして物語は、海岸線を歩く真人とみゆきの画で締めくくられていた。

アニソン大集合!Re:minderが選ぶ80年代アニメソングランキング

▶ 漫画・アニメの記事一覧はこちら!



2021.09.24
40
  Songlink
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1967年生まれ
ミチュルル©︎たかはしみさお
コラムリスト≫
36
1
9
8
7
EPICソニー名曲列伝:大沢誉志幸「ゴーゴーヘブン」洋楽臭と下世話臭の黄金比率
カタリベ / スージー鈴木
23
1
9
8
0
夏休みにRCサクセションを教えてくれたのは薬師丸ひろ子だった!
カタリベ / ソウマ マナブ
24
1
9
8
3
世界最大のアイドルフェス TIF2021 にも登場!「魔法の天使 クリィミーマミ」
カタリベ / ミヤジ サイカ
13
1
9
8
4
運動会を休んでまで観た「炎のキン肉マン」最高にカッコよかったぜ!
カタリベ / バーグマン田形
23
1
9
8
3
80年代を代表する「キャッツ♥アイ」アニメの主題歌を歌うと決めた杏里の決断
カタリベ / 松林 建
62
1
9
8
1
山口百恵の引退と松田聖子の進化、昭和歌謡から J-POP 黎明期へ
カタリベ / 本田 隆