8月25日

中森明菜がブロードウェイで見た夢、全曲英語詞アルバム「Cross My Palm」

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photo:Warner Music Japan  

ニューヨークでレコーディング、中森明菜のアルバム「Cross My Palm」


ある日のことです。最近、過去の各TV局のベストテン番組が放送されておりまして、それらを拝見するのが最近の楽しみのひとつとなっているのでありますが、1986年11月の『歌のトップテン』に中森明菜さんが出演していた際に、お休みにニューヨークに行ったというお話をされており、司会の徳光さんと明菜さんとで、

「ニューヨークではどのような刺激を受けられましたか?」
「ニューヨークではミュージカルも見てきたんですけど、とにかくでも…」
「話の途中ですが歌の準備をどうぞ!」

… という残念なやりとりがありました。明菜さんはもっとお話をしたそうだったのですが、そこは当時の生放送のあわただしい進行であるが故、3位となった「Fin」を絶唱されたわけです。

うーん… モヤモヤするぞこのやりとり。いったいニューヨークで何があったんだ? 明菜さん!? というわけで、ふと思い出したのがアルバム『Cross My Palm』のことでありました。

全曲英語詩、コンセプトは “12曲を歌う12人の明菜”


『Cross My Palm』はアメリカのソングライターに作詞、作曲を依頼し、アメリカのミュージシャンと共にニューヨークでレコーディングされた全曲英語詩の作品なのですが、非常にユニークなコンセプトで作られた、ということであるようです。

それが “12曲を歌う12人の明菜” であり、曲に応じてキャラクターを全く変えるというアプローチが取られました。

こうして出来上がったアルバムは1曲目から12曲目まで、あたかもひとつの舞台のように展開されるわけであります。慣れない英語の歌詞にご苦労され、レコーディングに3か月を要したということは明らかにされているのでありますが、そこには、とても楽しんでいるようなニュアンスも大いに感じられ、日本国内における歌謡曲のアイドルといった趣とは一線を画していることがわかります。

往々にして “歌姫” と称されることの多い明菜さんですが、ここではアクトレス… 女優という役割を、“歌” というツールを使って表現したかった… という強力な意思を感じる作品でもあります。従ってこのアルバムは真剣にTOP40入りを狙ったり、本格的にアメリカの音楽シーンに打って出るというよりは、日本人歌手という匿名性を逆手にとって爪跡を残してやろうという意図だったように思うのです。

そしてこのアルバム、日本のリリースから2年を経た1989年に米国でリリースされ、全米チャートにおいては90位台にランクインを果たしたということであります。

歌でもドラマでも大活躍、アルバムに込められた中森明菜の答え


ところが、ある意味肩の力を抜いて(しかしながら全力で)作られたこのアルバム、発売直後にアルバムチャートで1位を獲得し、コンサートツアーも行われるなど日本では大いに受け入れられたわけであります。

このような企画モノと言われるようなアルバムの中で得た経験は、その後の明菜さんの快進撃に向かうためのモチベーション作りには大いに寄与したでありましょうし、このようにアーティストとして楽しめる仕事の機会を与えた制作陣も素晴らしいと思います。

それでは1曲目の「Cross my palm」を聴いてみます。

エッジの効いたシンセベースと80年代後半を思わせるドラムマシンが醸し出すシュアなリズムの上に、少し抑え気味なボーカルが乗っています。そしてサビに来るとやや歌い上げるムードに変り抑揚がある唄いまわしとなり、明菜ボーカルの魅力が引き立つ曲作りとなっております。このように全体的には80年代後半の煌びやかなサウンドに彩られ、様々な魅力がアルバムを通じて表現されております。

おっと、この先はまずはご一聴いただき是非ご感想をお伺いしたいと思うところでございます。

その後、明菜さんは1992年にはいわゆる “月9” で放送された北川悦吏子さん脚本のトレンディードラマの筆頭格『素顔のままで』や、言わずもがなの『古畑任三郎』の記念すべき初回の犯人役を演じるなど、女優としてご活躍されるわけですが、そこにもこの「ミュージカルも見てきたんですけど、とにかくでも…」というキーワードの答えが見え隠れするような気がしてならないわけであります。

このように、様々なご活躍をされた明菜さんにはまだまだ幻惑されたいなぁ… などと思っているのです。



2021.04.29
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カタリベ
1966年生まれ
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