2月21日

神戸が生んだギタリスト是方博邦、貸レコード屋 “オヤユビピアノ” での出会い

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是方博邦のソロデビューアルバム「KOBE KOREKATA」がリリースされた日
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貸レコードでハマった、是方博邦のファーストアルバム


ダイヤモンドクロスの上を阪急電車がガタンガタンと通過する西宮北口駅で降り、歩いて5~6分のところにその貸レコード店はあった。

店の名前は、『オヤユビピアノ』。店名はアフリカの民族楽器で “親指ピアノ” とも呼ばれる “カリンバ” からとったものだ。アース・ウィンド・アンド・ファイアーのモーリス・ホワイトが弾く民族楽器としても知られている。黄色地のショップの袋には、赤でカリンバのイラストが描かれていた。

小さなビルの2階、階段を上って店に入ると、狭い店にギッチリと詰め込まれた膨大な量のレコードが目に飛び込んで来る。

数多のレコードたちに添えられた店員さん手書きのPOPが、これまた的確な内容で目を惹いた。聴いたことがない名前のアーティストでも、「ほな聴いてみよっか」と思わせる書きぶり。何かの番組でちょこっと流れて、「これ何やろ?」と心に引っ掛かっていた音楽や、テレビやラジオではあまり流れない音楽が、この店、オヤユビピアノには山のようにあった。何回か試聴させてもらったこともある。わたしがなんでもかんでも聴くようになったのは、自宅でダラダラと流しっぱなしにしていたラジオに加えて、オヤユビピアノのおかげといっても過言ではない。

このように、店内で流れていて速攻で借りて帰ってハマったうちの1枚が、是方博邦さんの『KOBE KOREKATA』。後に、OTTOTORIO(オットットリオ)や野獣王国、KORENOS(コレノス)、そしてバラエティ番組『音楽は世界だ!』のホストバンドKORE-CHANz等で活躍する是方さんのファーストアルバムである。

神戸出身のギタリスト、様々な表情のギタープレイ


1983年、高3のある日の塾帰り。カンカンカンと外階段を上って店に入り、ウォークマンのイヤホンを外した。入ってしばらくしてから目についたのは、若い男性が斜めを向いてポーズをとる『KOBE KOREKATA』と書かれたジャケット。

手書きのPOPがなければ最初はギタリストだとは分からなかった。バイトの顔見知りのお兄ちゃんと話していて、そのジャケットの男性が地元芦屋の甲南中学・高校の出身で、大村憲司さんや村上 “ポンタ” 秀一さんと一緒に活動していたり、甲南中学の先輩でもある桑名正博さんのティアドロップスに参加し、桑名さんの曲も書いていたギタリスト… と知った。そして、「聴いてみる?」とお兄ちゃんはレコードを出し、プレーヤーにセットして針を落とした。

爽やかでキラキラしたイントロからギターがメロディを歌う、神戸の街に相応しいA-1「CHURCH ON THE HILL」から始まる。聴きやすく、親しみやすいメロディ。ハードすぎず、粘っこいと思ったら爽やかだったり、様々な表情のギタープレイ。ポップな曲、ロックンロール、ブルージィな曲がほど良く混ざって飽きない。ギターってこんなに大らかに歌える楽器なんだ! 夢中で聴いていたら、あっという間にA面が終わっていた。

ドライブにピッタリ、アクセルを踏み続けるときのBGMとして最高!


ザ・スクエアやナニワエキスプレスなどのフュージョンにハマっていたわたしが迷わずお持ち帰りしたのは言うまでもない。黄色いショップバッグを大事に持って帰り、自宅でソニーのテープ “BHF” にダビングした。

帯のクレジットには、同じ神戸の出身で先輩の名ギタリスト大村憲司さん、是方さんがカミーノ時代に演奏していたロフトの元店員でサザンオールスターズのギタリスト大森隆志さん、是方さんがグループに参加していた松岡直也さんが名を連ね、それぞれがコメントを寄せている。

それから暫くの間、学校や塾の行き帰り、音楽のお供は是方博邦さん一色になった。

さらに大学に入り、免許を取ってからはこの『KOBE KOREKATA』と、ロック色がより強くなった次作『MELODY CITY』をカーステレオでよくかけていた。学校帰りに空いている阪神高速を西に向かう。左手遠くには海、右手には神戸市街と六甲の山々。そんな景色のなかで、『KOBE KOREKATA』のA-2「WALKIN’(IN MEMORIES KOBE)」やA-3「NIGHT VIEW」はアクセルペダルに適度な力を掛けて踏み続けるときのBGMとして最高だった。

オヤユビピアノさんは、それから2年も経たないうちに西宮北口駅からほど近いビルの1階に移転した。高3のわたしに是方さんを教えてくれたお兄ちゃんは卒業し、雑多な印象から白基調の明るい店内に。メジャーな作品の扱いも増えたが、相変わらずギッチリとレコードが詰め込まれていたこと、目を惹くレコード紹介POPを添えていたことは変わらなかった。



2020.10.07
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カタリベ
1965年生まれ
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