日本語のように聞こえる洋楽の歌詞を笑い飛ばす…… といえば、今やそれは『タモリ倶楽部』の人気コーナー “空耳アワー” の専売特許。しかし1980年代の前半に洋楽に目覚めた高校生にとって、それは『全米TOP40』だった。 1972年から1986年まで、ラジオ関東(現在のラジオ日本)で放送されたこの番組は、ベストヒットUSA世代には思い出深いラジオ番組だ。 毎週土曜日23~26時の3時間にわたり、その週のビルボードのヒットチャートを40位からカウントダウン。26時からの一時間番組『全英TOP20』と併せ、毎週のようにチャートをノートに書き写していた。この熱意は、残念ながら勉強に活かされることはなかったが……。 それはともかく、この『全米TOP40』の番組内では “空耳アワー” 的なコーナーが存在し、毎週のように深夜にバカ笑いをしたものだ。コーナー名は覚えてないが、ご存じの方がいたら、ぜひ教えていただきたい。確かリスナーからの投稿からなっていたと思うが、その記憶も定かではない。とにかくそれは、バカ高校生の前頭葉を大いにくすぐった。 たとえば、ビリー・ジョエル、1983年のヒット曲「ロンゲスト・タイム」。その一節が “聖子がトシちゃんとした~” と、聴こえるとか、時代を物語るような空耳もあった。よくもまあ、こんなのを見つけるもんだなあ…… と、感心したものだ。 何より笑ったのは、スティクス「ミスター・ロボット」の一節。ボーカルのデニス・デ・ヤングが “I’m not your savior!” とシャウトする部分。これが “あなた性病!” とハッキリ聴こえてしまったときだ。ご存じのとおり、「ミスター・ロボット」は「ドモアリガット、ミスター・ロボット、ドモ、ドモ」という日本語のフレーズを含んだ、日本人にとっては少々ファニーな響きがある曲だが、ここにも日本語が隠されていたと思うと、おかしみも倍増する。 同曲を核にしてコンセプトアルバム『ミスター・ロボット(Kilroy Was Here)』を築き上げたスティクスには申し訳ないが、以来この曲は性病ソングとしてインプットされてしまった。 振り返ってすごいなあと思うのは、ラジオ番組だから “空耳アワー” のような映像がなかったこと。だからこそ、絵的なイマジネーションは大いに刺激された。 眠い目をこすりながら、受信状態が良いとは言えないド田舎で聞き取り、それでも思い切り笑えたのは、イマジネーションが深夜のハイ状態によって必要以上に刺激され、白衣姿のデニス・デ・ヤングが患者を指さして絶叫する姿を思い浮かべてしまったからだろうか。いずれにしても、バカ高校生だ。こういうくだらないネタは大好きだった。 その後、『タモリ倶楽部』で “空耳アワー” が始まり、こちらも笑って楽しんだ。とりわけ絶叫系ボーカルの一発フレーズがツボにハマッたのは、デニス・デ・ヤングの初期衝動が鮮烈過ぎたから、かもしれない。
2018.03.16
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