日本を代表する【作詞家 山上路夫】その言葉は時代を超えて生きる勇気をもたらしてくれる！

「翼をください」「学生街の喫茶店」といった国民的なヒット曲も手がけた作詞家 山上路夫

1970〜80年代は、作詞家や作曲家の名前をテレビで認識することが圧倒的に多かった時代。歌番組のテロップをはじめ、主題歌系であれば、オープニングやエンディングのクレジットで何度も見るうちに自然と刷り込まれる。例えば「ピンポンパン体操」や「ウルトラマンタロウ」で作詞家・阿久悠の名前を知り、さらにアイドルや演歌の作品とも結びついた。もっとも阿久氏の場合は、作曲家の森田公一や中村泰士、都倉俊一らとともに『スター誕生！』に審査員として出演していたこともあって、顔と名前が早くから一致していた例かもしれない。

作詞家 山上路夫の場合は、そのお顔こそなかなか見えてこなかったものの、小柳ルミ子や天地真理ら、新たなブームの先陣を切ったアイドルたちへの作品で名前を覚え、「或る日突然」「翼をください」「学生街の喫茶店」といった国民的なヒット曲群も氏の作品であることを後から知って、歌謡界における絶対的な存在であることを確信した。その後何かの雑誌で初めて写真を見た時、作風から勝手に連想していた姿を裏切らない上品で優しそうな笑顔に安堵したことを憶えている。

フリーとなって最初に手がけた、佐良直美「世界は二人のために」

阿久悠やなかにし礼が亡き今、同時代に活躍した作詞家では唯一の現役といってもいい山上路夫が作詞家になる決意をしたのは、大学生の頃。中原淳一が創刊した雑誌『ジュニアそれいゆ』に投稿した詩が掲載されたことがきっかけになったという。父親が「港が見える丘」や「君待てども」の作者で知られる東辰三であったことも志に少なからず影響をもたらせたのではないだろうか。雑誌『平凡』の松尾和子の歌の作詞公募に入選したのを機にビクターレコードの専属となり、当初は大御所の吉田正と組んだ作品もある。

並行して作曲家・いずみたくと組んで多くのCMを作詞した後にフリーとなって最初に手がけたのが、やはりいずみとの作で佐良直美のデビュー曲となった「世界は二人のために」だった。もともとはチョコレートのCMソングだったこの曲の大ヒットで山上の知名度は一気に拡がる。一時期は結婚式の披露宴に欠かせないスタンダード・ナンバーとなっていた。続けて由紀さおり「夜明けのスキャット」、森山良子「禁じられた恋」、トワ・エ・モワ「或る日突然」など大きなヒットが重なり、その名を轟かせる。

1970年代に入って歌謡界に訪れた大きなムーブメントのひとつが、相次ぐアイドルたちの登場だった。そのブームを牽引した天地真理の「虹をわたって」や「恋する夏の日」、小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」では歌謡大賞を受賞したほか、アグネス・チャン「ひなげしの花」、キャンディーズ「あなたに夢中」など、歌手にとって大切なデビュー曲も多く手がけている。並行して、赤い鳥「翼をください」、ガロ「学生街の喫茶店」の大ヒット。共に当初はシングルのＢ面収録曲だったことは有名だろう。優しさと愛情に満ちた作風は、アイドルポップスにもフォークにも歌謡曲にももれなくフィットして、数々の傑作が生み出されていった。

特別な輝きがある、作曲家 村井邦彦とのコンビ作品

中でも「或る日突然」「翼をください」に代表される、作曲家 村井邦彦とのコンビ作品は特別な輝きがある。村井とは初対面からすぐ気が合って最高の友好関係を築くことになり、そのひとつの表れがアルファミュージックの創設に参加したことであったろう。山上が語る、自身の作品を最も上手く表現してくれた歌手は森山良子、山本潤子と白鳥英美子だそうだが、彼女たちへの提供作はいずれも村井とのコンビ作である。互いに「クニ」「ガミさん」と呼び合う村井との深い絆は今も続き、最新作も同コンビの作品になるという。

８割は曲先だという作品でも、純歌謡曲的な歌には詞が先の場合もあるそうで、江利チエミ「酒場にて」などはその最たる例にあたる。意外なヒット曲かもしれないが、そこに紡がれている言葉は紛いもなく愛情に満ちた山上の詞なのだ。野口五郎「私鉄沿線」、ゴダイゴ「ガンダーラ」、みな形は違えど人生を見据えた普遍的な魅力に溢れた詞世界が広がっている。世代によっては「ウルトラマン80」の主題歌が強く心に残っているのではないか。"君は誰かを愛しているか？ それは生きてることなんだ" 。作詞家・山上路夫が紡ぐ言葉は時代を超えて我々の心を豊かにし、生きる勇気をもたらしてくれる。


◉ Information
2024年３月13日発売『山上路夫ソングブック』
日本を代表する作詞家・山上路夫の60年に及ぶ偉業をCD５枚に集大成。特設サイトには収録アーティストのコメントが多数掲載されています！
https://www.110107.com/yamagamimichio

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2024.03.13