私は大学で働いてるゆえ、当世の若者事情には自ずと詳しくなるのだが、最近はチャラい連中を「ウェーイ系」と呼ぶ(2016年現在)。語源は、皆で集まって乾杯するとき「ウェーイww」って言うからなんだけど、ウェーイ系は、きのうきょうに始まった話ではない。その起源とおぼしき痕跡は、バブル期にたどることができよう。その生態を今に伝える番組が『DADA L.M.D』である。
『DADA L.M.D』、それは89~90年にテレビ朝日が深夜にオンエアしていた番組。MCは恵俊彰とRIKACOであった。構成はいたってシンプルで、人気のディスコ(時代的にクラブではない)で踊りに自信のある若者たちがその技を披露する、それだけの番組である。テレビ的にはロケ撮影してしまえば、音はDJが現場でかけてくれるし、編集もミニマムで済むので、低予算の深夜番組にはうってつけの企画であった。しかし、ENGカメラが軽量化したこともあり、超ローアングルから撮ってみたり、カメラを急回転させて撮ってみたりと、躍動感のあるカメラワークを楽しむことができた。
深夜のマイナーな時間帯とはいえ、『DADA L.M.D』は、ダンサーというものがマスメディアに取り上げられるきっかけになった番組でもあった。この番組から生まれたダンスユニットが、あの「ZOO」である。その中には、エグザイルのHIRO(五十嵐広行)やTRFのYU-KI(北村夕起)、和製マイケル・ジャクソンと言われたTACO(野嶋千照)などがいた。番組内のダンスバトルで勝ち抜いた者たちが、そのつどZOOのメンバーに加えられていったのである。つまり我々の世代は、このグループが結成される経緯を毎週テレビで見続けていたことになる。そして、今となっては、これは若者の世相風俗の貴重なドキュメントでもある。
その後、ZOOはJR東日本「JR ski ski」のCMに大抜擢される。曲はあの大ヒットナンバー『Choo-Choo-Train』(ボーカル:SATSUKI=御木五月、作詞:佐藤ありす、作曲:中西圭三)だ。JR東日本のCMはシングル盤の発売よりも1ヶ月ほど先行してオンエアされたのだが、とてもエポックメイキングな内容であった。
一つは、それまでの車で行くユーミンの苗場に対抗して、〔新幹線→湯沢GALAスキー場へ直結〕と、非日常への移動装置として新幹線を位置付けたマーケティング戦略。そしてもう一つは、このCMでロールダンス(ぐるぐる回るアレね)が初めてマスメディアを通じて広まったことだ。CM中、そのシーンにテロップされるキャッチコピー「雪男。雪女。」も実に秀逸。
このCMが放送された頃、私は広告代理店に就職したばかり。しかも同じ社内にJR東日本の広告担当チームがあったので、あのチャラいCMの雰囲気はよ〜く覚えている。関係者に「ブイブイいわせてるねぇ!(死語)」と軽口を叩いた記憶もある。なんてったって、CM中のZOOメンバーの会話がバカっぽくて最高である。画面から「ウェーイww」が伝わってくる感じでしょ。
ちなみに『Choo-Choo-Train』とは英語の幼児語で「汽車ぽっぽ」である。決して男女が車内でチューしてる列車ではない。
2017.01.18
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