ザ・ブルーハーツのリンダリンダを初めて聴いたのは確か小学6年生の頃。
当時CDショップの店長をしていた叔父はあらゆる音楽に精通し収集癖もかなりなもので、メジャーどころからマニアックな作品まで毎日のように幅広く聴かせてくれた。
指揮者が違う同じ交響曲を聴き比べるのが日課で、具体的にどう違うかは分からなくても感覚で誰の演奏か分かるくらいまでには、私も気づけばなっていた。
そんな叔父のヲタクぶりは私の後の人生に大きく影響を与えることとなり、このご時世に私はめでたく音楽家の道を歩むこととなる。
幼少期の教育は本当に大切だ。
大事なことなのでもう一度言う。幼少期の教育はマジで大事。うん。
叔父がある日1枚のCDをくれた。ザ・ブルーハーツの販促用のサンプルCDだった。親の期待とプレッシャーを背負った過酷な中学受験。音楽と伊集院光のラジオと叔父さんが喫茶店でご馳走してくれるクリームソーダとショートケーキくらいしか楽しみがなかった。そんな私にとってサンプル盤というレアさも重なって、もらった時はものすごくワクワクした。
帰宅してCDラジカセで初めて聴いた瞬間、彼らのダイレクトな歌詞と分かりやすいメロディーにすっかり取り憑かれる。CDには「リンダリンダ」の他に「TRAIN-TRAIN」や「キスしてほしい」「人にやさしく」などの名作も収められていたが、もらったその日から狂ったようにエンドレスリピートで聴き続けた。
叔父はくれる割には「どこがいい」とか理由は聞かないタイプだったし、私も具体的に何が好きとか考えていなかった。ただ純粋に当時の心境とシンクロして歌に励まされていたのだろうと思う。
このメロディーに乗せて歴史の年号とか地名とか暗記してたら、ひょっとして第一志望校に合格していたかもしれない。
あれから20数年が経過しヴォイストレーナー・ソプラノ歌手になって改めてこの曲を聴くと、冒頭アカペラ部分の甲本氏の歌の「音程の良さ」とか「無駄のない日本語と旋律のバランス」とか、さすが名曲! と驚嘆させられることばかりだが、そんなことはどうでもいい。
『愛じゃなくても 恋じゃなくても 君を離しはしない。』
ドブネズミは恋人であり、友であり、父であり、神だったのだ。不安と孤独を抱えた小学生の私は、誰よりも優しく、何よりも温かいドブネズミに恋をしていたんだ。
大人になり、人の心ほど不安定なものはなく、変わって当たり前でそれが魅力だということも知った。
「永遠」とか「絶対」とか言う人は信じられないし自分も言わないけど、もし「とにかく君を離さない」って真顔で言われたらひょっとしたら「はい」って答えてしまうかもしれない。
ああ、ドブネズミに守られたい。
そして私もいつか誰かのドブネズミになれますように。
歌詞引用:
リンダリンダ / ザ・ブルーハーツ
2017.08.28
YouTube / gucchi
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