今年もあっという間に8月が終わってしまった。
8月って特殊だ。何か素敵な事があるんじゃないかという期待と、結局何も無かったなという諦めとの繰り返し。すべては “夏休み” という魔法の言葉のせいだ。
我が永遠の妹、渡辺満里奈の3枚目のシングル「マリーナの夏」が発売されたのは、1987年4月8日。おニャン子クラブの会員番号36番は、デビュー曲「深呼吸して」、2枚目の「ホワイトラビットからのメッセージ」に続いて、この曲でもオリコンチャート1位を獲得する。これはもう既定路線。
この曲のタイトルを聞いた時、さすが秋元康、そりゃそうだよな、と思ったよ。満里奈という名前は、ヨット好きだった彼女の父親がマリーナからとって名付けた。曲のタイトルにマリーナを使わない手はないからね。
当時、仲間内から “おニャン子番長” という名誉職をもらっていた僕は、自分で作る編集テープの1曲目は必ずおニャン子系に決めていて、この年の夏用カセットテープの1曲目はもちろん「マリーナの夏」。夏休みになれば、海だ、山だとドライブで、満里奈のファンであるかどうかに関わらず、僕の仲間たちは何度も何度もこのキラキラした夏のアイドルソングを聴かされることになる… はずだった。
「マリーナの夏」は4月に発売された夏の曲。本来であれば夏の初めに相応しい曲なのだけど、僕にとっては、夏の終わりを感じさせるちょっと切ない曲となっている。それはこの夏が1987年の夏だったから。
当時、僕は大学4年生。学生最後の夏は就職活動で、ほぼほぼ遊ぶ時間なし! 夏休みは例年のように仲間と車であっちこっち遊びに行くことが許されず、車の中でみんなで「マ・リ・ナーーー」とコールすることも出来なかった。さすがに一度くらいは海に行きたくて、葉山マリーナで「マリーナの夏」を聴いたりはしたけどね、おニャン子番長の意地で。
来年からは小学校から大学まで続いたひと月を超えるような長い夏休みはもう無いんだなぁ〜という悲しみと、じゃあ最後の夏休みだから思いっきり遊ぼ〜と思っても就職活動でそうもいかないというもどかしさ。もちろん、いよいよ社会人かぁ〜という期待感もあったりする。
そんな複雑な夏とリンクしてしまったがゆえに、僕にとってはちょっと切ないサマーソングになってしまった「マリーナの夏」。実はもうひとつ、この曲の切なさを演出してくれた要因があった。それは、『夕やけニャンニャン』の終了だ。
番組終了の兆しは、この「マリーナの夏」が発売された4月頃から見られるようになった。いわゆる “飽き” だった。この時期、「ザ・スカウト アイドルを探せ」も終了したし、なにより夕ニャンファンは番組の行き詰まりを一番感じていたはずだ。
番組の終了とおニャン子クラブの解散が正式に発表されたのが6月15日、番組は8月31日で最終回を迎えることになる。学生時代の自由な夏も終わり、おニャン子クラブも終わる。1987年の夏は僕にとって、現実を受け入れないといけない、複雑で切ない時間だったんだ。
満里奈は、7月15日にこの年2枚目のサマーソング「夏休みだけのサイドシート」を発売している。この曲が満里奈最後のオリコン1位の曲となる。残念ながら、翌週には13位にランクダウンしてしまい、オリコン史上初めてシングルチャート1位を獲った翌週にトップ10圏外となってしまう。そして、この曲の作詞は麻生圭子で秋元康ではない。秋元さんが作詞から離れたのもショックだったなぁ。
1987年、満里奈の二つの夏歌が、ちょっと切ない曲としてインプットされているのは、あくまで僕の個人的な話。本来は、ピカピカのアイドルが歌うキラキラしたラヴソング。聴くタイミングによっては、その曲のイメージは人それぞれで違うんだろうなと思うと、いや~音楽って、本当に面白いもんですね。
2018.08.31
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