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単純素朴なロックの系譜、フールズはいつだって新しい

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photo:goodlovin  

ロックだとかパンクだとかくっだらねーんだよ、おれたちがやるものがロックと呼ばれるかどうかなんてかんけーねーし、たまたまこれっきゃねーとおもってやってるのがロックなだけで、それにとやかくいわれたくねーし、とやかくいわれたってどうせやるもんもかわんねー。売れたって売れなくたってやりたいことやってるだけでいまさらかえられねーから、どうでもいいんぢゃん。きっと俺たちのこと面白いと思うやつらも、ちょっとはいるだろうさ。

ロックについて反抗、反体制、反骨、プロテストなんて言葉が並べられるととたんに鼻白む。俺たちの音を聞け! なんて大上段に構えておきながら、聞いてみれば現状への不満たらたら居酒屋談義だったするし、この世に妥協と順応主義がはびこっているのは確かとしても、(戦争反対、原発反対、エイズ撲滅みたいな)至極まっとうで無害な主張をまくしたてられようものなら、即座に説教臭く感じてしまう。

その一方で、聴いている方が気恥ずかしくなるほどまっすぐで野卑な姿勢を貫きつつ、こんな世の中なんて早く捨てちまえ、う*こでもお召し上がり(く*食らえ)ってな具合に、若気のいったりきたりを引き受けてくれるバンドが10年に1つくらいはあるもんだ。

The Fools(フールズ)はそんなバンドの一つだ。 結成は1980年、マイペースで栄枯盛衰とはまるで無関係。ファーストアルバム『Weed War』(1984年)の音は限りなく独創性に乏しく、ブルースを基盤としたいわゆる正統派ロック。フォークと頭脳警察ゆずりの単刀直入な歌詞はひたすらわかりやすい。「今が最高なのさ!」、「空を見上げて」、「もっともっと自由が欲しい。自由が最高(Mr.Freedom)」なんて感じでいわば野暮ったい。

僕が初めてフールズの名を知ったのは、江戸さん不在時のJAGATARAがフールズの「いつだってそうさ」をステージで演奏していたと聞いたからで、それで針を落としてみたら、それはそれは衒いのないメッセージ色の強いブルースロックだった。JAGATARAが作ったスタジオ(通称「ジャガスタ」)で、それもOTOさんのプロデュースで(ほとんど)一発録りされたらしく、懐かしささえ覚えてしまう。参加メンバーにはJAGATARAやTOMATOSのメンバーの他、ホッピー神山などが名を連ねている。ファーストのジャケットは『南蛮渡来』をデザインした八木康夫さんの作品だった。

時は下って今から2年前の2015年1月。かつてDJ Krushが参加していたJazzy Upper Cutが一夜限りの再結成ライブをやるというので僕は高円寺のShowboatに駆けつけた。そこでJazzyの中心であったノブさん(桑原延享)が今もやっているDeepcountの演奏中、前年にギターの川田良さんが亡くなったことを知った。僕にとっては「フールズの川田」さんだ。その晩ノブさんが差し込んだ「もうがまんできない」を聴きながら、僕はJAGATARAとフールズの共通点を探っていた。

音に新味も冒険もなく王道ブルースにすぎず革新なんて無縁だとしても、「いつだってそうさ」はフールズにしか出せない音だ。「わけなんてないさ」「空を見上げて」なんてシンプルでずばり直球の歌詞はフールズのものだ。でも単純素朴(シンプル)と簡単・安易(イージー)とは異なる。シンプルな歌詞は歌い継がれる。それはいつだって新しい。頭脳警察、村八分、フールズ、ブルーハーツ…。そんな衒いのない、彼らだけにしかつくれない自然なロックの系譜もこの国にはあるのだ。

2017.02.20
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  YouTube / GoodLovinProduction


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カタリベ
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