今日は、僕の大好きなソングライティングチームの1つである、ニコラス・アシュフォードとヴァレリー・シンプソンの夫婦デュオによって生み出された名曲を紹介したい。
この夫婦の楽曲の中で僕が初めて好きになったのは、ダイアナ・ロスがシュープリームス脱退後に発表したソロシングル第2弾の「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」だった。
もちろん最初に聴いた時は、まだ僕が音楽的な意味で物心がつく前だったので、この曲がアシュフォード&シンプソンの作品だということも、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルのカバーということも知る由はなかった。単純に、この6分超の大作の中の、女王然としたダイアナ・ロスの存在感にただただ圧倒されたのだった。
そして、その後、年月が流れて、僕も多少なりとも音楽をかじるようになり、その頃に出会ったのが、アシュフォード&シンプソンがチャカ・カーンに書き下ろした「アイム・エヴリ・ウーマン」である。
この曲は、女性賛歌的な歌詞にパワフルなボーカル、タイトだけど華やかなサウンド、これらが相まって何とも言えない高揚感を醸し出している。ソロデビューを果たしたばかりのチャカ本人にとっても、景気づけの一曲になったんじゃないか、そんな風に思ったりもする。
プロデューサーは、幅広いジャンルの楽曲を手掛けて米国の音楽界をリードし続けて来たアリフ・マーディン。そして、レコーディングに参加したミュージシャンも、まさに豪華ラインナップだった。
アヴェレイジ・ホワイト・バンドからスティーヴ・フェローン(ドラム)とヘイミッシュ・スチュアート(ギター&バッキングボーカル)、スタッフからリチャード・ティー(ピアノ)、そしてフィル・アップチャーチ(ギター)とウィル・リー(ベース&バッキングボーカル)、そこにアリフ・マーディンのストリングスが被さることで、この素晴らしいサウンドは出来上がっている。
この曲は、後にホイットニー・ヒューストンにカバーされていることでもお馴染みだ。こっちのプロデューサーはナラダ・マイケル・ウォルデン。2つのバージョンを聴き比べる時には、シンガーの違いだけでなく、プロデューサーの違いにも注目してみると面白いと思う。
ホイットニーのバージョンは映画『ボディガード』に収録されたので、特にバブル女子にとってはこっちの方がピンと来るかもしれない。それに、ビデオクリップにはチャカも登場し、ホイットニーのチャカに対する敬意が感じられるのも何だか微笑ましい。
ちなみに山下達郎は、この曲について、自身のラジオ番組『山下達郎のサンデー・ソングブック』(TOKYO FM)の中でこのように語っている。
「70年代のアリフ・マーディンの仕事で最も好きな1枚は、チャカ・カーンのソロデビューアルバム、1978年のアルバム Chaka(恋するチャカ)、これからシングルカットされまして、全米ソウルチャートナンバーワン、アイム・エヴリ・ウーマン。お若い方にはホイットニー・ヒューストンのカバーで有名な曲ですけれども全然比べ物になりません。アシュフォード&シンプソンの曲でございます」
Song Data
■ I'm Every Woman / Chaka Khan
■ 作詞・作曲:Nickolas Ashford, Valerie Simpson
■ プロデュース:Arif Mardin
■ 発売:1978年9月(1978年12月23日 21位)
Billboard Charts
■ Ain't No Mountain High Enough
Marvin Gaye & Tammi Terrell(1967年7月15日 19位)
Diana Ross(1970年9月19日1位)
■ I'm Every Woman
Whitney Houston(1993年2月20日 4位)
■ Chaka / Chaka Khan(1978年12月16日 12位)※アルバム
■ The Bodyguard / Whitney Houston(1992年12月12日 1位)※アルバム
2018.03.23
YouTube / Chaka Khan
YouTube / whitneyhoustonVEVO
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