僕が人生で最も音楽を聴き漁ったのは、高校時代だ。そして、その頃に聴いたレコードの中でも、僕はこのアルバムに出会った時の衝撃を忘れることができない。演奏がまさに “炸裂” していたからだ。
そのアルバムとは、グレッグ・マティソン・プロジェクトの『ベイクド・ポテト・スーパー・ライヴ!』である… と言っても、皆さんの多くは「???」に違いない。だが、参加メンバーの名前を聞けば「あぁ~」となること間違いないと思う。
■グレッグ・マティソン(キーボード)
■スティーヴ・ルカサー(ギター)
■ジェフ・ポーカロ(ドラム)
■ロバート・ポップウェル(ベース)
そう、ルカサーとポーカロの2人は、ご存知TOTOのメンバーである。そして、グレッグ・マティソンはラリー・カールトンのアルバムやツアーで知られており、ロバート・ポップウェルはクルセイダーズでのファンキーなプレイが有名だ。要するに、当時のLAの最高水準のミュージシャンが、このプロジェクトのために集められたという訳だ。
この演奏は1981年12月13日~15日にLAのジャズクラブの老舗『The Baked Potato』で収録され、アルバムは82年に日本のみでリリースされた(発売元はCBSソニー)。
その後すぐに廃盤になったが、99年に日本のクール・サウンドがCD化、2011年にはクール・サウンドとタワーレコードのコラボレーションによって復刻版が発売された。
つまり、このアルバムは世界的なミュージシャンの演奏でありながら、日本のコアな音楽ファンの間だけで借り継がれてきた “知る人ぞ知る” 名盤なのだ。
曲は全てインストゥルメンタルで、全体的に明るく乾いた、いかにも西海岸なサウンドだ。演奏は相当テクニカルなので、楽器をやっている人でないと楽しめないかもしれない。ちなみに、信じられないことに、オーバーダビングなしの生一発録りだそうだ。
当時、ルカサーとポーカロはまだ20代だったが、セッションミュージシャンとしてありとあらゆる楽曲のレコーディングに駆り出され、まさに東奔西走していた。そんな彼らが、日頃のお仕事セッションのストレスから解放されたかのように “炸裂” しているのが、このアルバム最大の聴き所だと思う。
ところで、僕が94年に初めてLAの地に降り立った際、現地在住の友人(たまにこのコラムに登場する高校時代の同級生女子)に頼んで、『The Baked Potato』に連れて行ってもらった。
初めて訪れた伝説のクラブは、正直、ただの小屋にしか見えなかった。それに、とても客を迎える気があると思えない「一見さんお断り」的な佇まいだったし、中に入っても客席はガラガラ、おそらく地元でも無名であろうクロスオーバー系のバンドが出演していた。
だが、その演奏を聴いてビックリ。東京ではまずお目にかかれない位、クオリティが高かったのだ。特にドラマーが凄くて、まるでスティーヴ・ガッドが叩いているんじゃないかと思う程。こういう所だからこそTOTOのようなバンドが出てくるんだ、そう思い知らされた一夜であった。
2017.07.21
YouTube / bmode68
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