カルロス・ゴーンがフィル・コリンズの大ファンだったって、知ってた？

2018年11月19日、カルロス・ゴーンが逮捕されるという衝撃的なニュースが世界中を駆け巡った。改めて言うまでもないが、カルロス・ゴーンとは、ルノー会長兼CEOにして日産自動車会長、三菱自動車会長、ルノー・日産・三菱アライアンス代表を務めていた世界的な経営者のことである。

もちろん、僕は法律の専門家でも何でもないので、本件についてコメントする資格はない。でも、この原稿を書いている時点では、まだ有罪が確定した訳でもないのに、彼が上述の全ての地位を奪われ、東京拘置所に長期に渡って勾留されたことを考えると、既にとてつもない制裁を受けてしまっているような気がする。

… とまあ、それは置いといて、今日の本題は、米国の高級日刊紙『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された、彼の娘へのインタビュー記事の中にある。

He has been denied other items, including family photos, a pen and paper, dental floss (“He is a big flosser,” his daughter Maya said) and an iPod Nano loaded with music by his favorite, Phil Collins.

要は、拘置所への持ち込みを禁止されたアイテムが列挙されているのだが、その中に「大ファンのフィル・コリンズの曲がつまった iPod Nano」とある。そう、どうやらカルロス・ゴーンは、フィル・コリンズが好きらしいのだ。でも、この二人、何となく似てないか？

2000年代初頭、カルロス・ゴーンは『フォーチュン・グローバル500』に名を載せる２つの企業の最高経営責任者を同時に務めた最初の人物となり、文字通り世界中を飛び回っていた。それを見て僕は、まるで「1980年代のフィル・コリンズ」みたいだな、と思っていた。

1985年７月に開催された「ライヴエイド」において、出演者の中でただ一人、ロンドンとフィラデルフィア両方のステージに上がったフィル・コリンズは、当時「世界で一番忙しい男（Hardest-Working Man）」と呼ばれていた。彼のライフスタイルは、リオデジャネイロやベイルート、パリ、東京などに自宅を構え、大陸横断フライトを繰り返すカルロス・ゴーンとそっくりだった。

もちろん、２人の容姿や風貌がどことなく似ている、というのもある。だが、複数の顔を持ち（フィル・コリンズはドラマーとシンガー、そして俳優。カルロス・ゴーンはルノーと日産のトップ）、インターナショナルでワーカホリックな働きぶりを見せていた彼らが、僕には「瓜二つ」に見えたのだった。

で、そのフィル・コリンズだが、彼が最近どうしているか、皆さんはご存知だろうか？

実は、2010年に彼の在籍していたジェネシスがロックの殿堂（Rock & Roll Hall of Fame）入りを果たしたものの、彼自身は首の脊椎脱臼とアルコール中毒症に伴う問題を抱えて、10年近くリタイア状態であった。

だが、2015年に米国の音楽誌『ローリングストーン』のインタビューで復帰の意欲を語ると、翌16年８月にはテニスの全米オープンの前夜祭に出演し（息子のニコラス・コリンズがドラムを担当）、10月には過去のシングル曲を集めたアルバム『The Singles / シングルズ・コレクション』をリリースした。

リリース時には、『ジョナサン・ロス・ショー』（ITV）、『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』（NBC）、『レイチェル・レイ・ショー』といったトーク番組に立て続けに出演するなど、精力的にプロモーション活動を行った。さらに17年にはツアーを開始したのだが、ツアー名は何と「Not Dead Yet Live!（直訳すると「まだ死んでない、生きている!」）」。シャレが効いていると言うか何と言うか… 。

まぁともかく、フィル・コリンズは68歳になった今も頑張っているのである。その姿を見たら、65歳のカルロス・ゴーンも少しは元気が出るだろうか。もっとも、僕は彼と縁もゆかりもないので、どうでもいいっちゃ、どうでもいいのだけど。


Song Data
■In The Air Tonight / Phil Collins
■作詞・作曲：Phil Collins
■プロデュース：Phil Collins・Hugh Padgham
■発売：1981年１月５日

Billboard Chart＆Official Charts
In The Air Tonight / Phil Collins （1981年２月７日 全英２位、1981年８月15日 全米19位）

2019.05.14