咲かせて 咲かせて 桃色吐息
あなたに抱かれて こぼれる華になる
なんて色っぽい曲なのだろう。まるで大人のおとぎ話を見ているかのような、幻想的で夢のような世界観。まだ「抱かれる」の意味もよくわからなかった子供だった私も、母がこの曲を歌う時はうっとりしたものだ。
いつも純朴な曲ばかり歌っていた母が、この曲を父の傍で歌う時の表情が妙に綺麗だったことを思い出す。桃色の吐息…
抱かれるたび素肌 夕焼けになる
歌い出しから妖艶すぎる歌詞。そして、官能的な旋律―― ちょっと想像するだけでもドキドキしてしまう。この印象的でアンニュイな雰囲気はかつてのムード歌謡を彷彿とさせる。
1984年5月にリリースされた「桃色吐息」は、髙橋真梨子さんの10枚目のシングル。『カメリアダイヤモンド』のCMソングとして大ヒットした。真梨子さんはこの曲で、ソロとして初めてNHK紅白歌合戦への出場を果たしている。
リリースから30年以上経った今でもカラオケで人気のこの曲。中学生の頃、母の真似をして歌うようになった私だが、今では自身のワンマンコンサートでも披露するほど大好きな曲となった。
その素晴らしい歌詞を手掛けた作詞家の康珍化さんにも注目したい。「桃色吐息」は、康珍化さんが30歳の時にリリースされた作品なのだが、その若さでよくもこんな大人の濃厚な愛の歌が書けたなあと脱帽する。
それよりもっと若かった20代の1982年には、これまた名曲の上田正樹「悲しい色やね」を手掛けている。そして1984年、第26回日本レコード大賞作詞賞を「桃色吐息」が受賞。
同曲は、当年大ヒットした安全地帯「ワインレッドの心」と並び称され、深く妖艶な大人の世界を描きながら、それまでのムード歌謡とは一線を画していた。
最初にメロディーが来た時にビートルズのような感じがしてかっこいいと思った真梨子さん。しかし歌詞を見てセクシー過ぎるとショックを受けたという。周囲から「真梨子さんなら卑猥にならない」と説得され渋々歌うことになったとか。
そんなこともあってか、あまり気合を入れて歌わなかったそうだが、これが功を奏し淡々としたものが逆にウケた。大ヒットに繋がったことは意外だったそうだ。
歌詞引用:
桃色吐息 / 髙橋真梨子
2018.01.23
YouTube / LEGACY80s
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