4月21日

麻里ちゃんは、ヘビーメタル。から40年!浜田麻里はどこまで浜田麻里を超え続けるのか

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40年間変わらぬイメージ! ロックシーンで稀有な普遍性を保つ浜田麻里


『Lunatic Doll~暗殺警告』で浜田麻里がデビューしてから40年の節目を迎えた。当時、糸井重里による「麻里ちゃんは、ヘビーメタル。」のキャッチコピーは、ファンならずとも有名な話だが、あれから40年後に「浜田麻里は、今でもヘヴィメタル!」と新たなキャッチコピーをつけたくなるとは、誰が想像しただろうか。

日本のロック史を見渡しても、浜田麻里は極めてレアな存在感を放っている。その黎明期から辿ると、伝説的なカルメン・マキをはじめ、ロックに主軸を置く女性ソロシンガーはいたし、ヘヴィメタル / ハードロック(HM/HR)系に絞ると、今も精力的に活動するSHOW-YAの寺田恵子なども想起されるだろう。

それでも、浜田麻里ほど変わらぬ歌声と美貌で、デビュー以来のアーティストイメージを堅持しながら、40年もの永きに渡りシーンの最前線でHM/HRを歌い続ける女性ソロシンガーは一人もいない。パイオニアである彼女がアーティスト活動を続けること自体が、その稀有な存在感をさらに増すことに繋がっていく。

僕は浜田麻里とほぼ同時代に生まれ、彼女のアーティストとしての歩みを、いちファンとしてリアルタイムで体感してきた。それだけに、40年の時を経てもなお輝きを増していく魅力の強さに、改めて最大級の敬意を覚えずにはいられない。

イニシャル「H・M」を冠した女性メタルシンガー


80年代に勃発したジャパメタムーブメントの中で、浜田麻里は「ヘヴィメタル」の頭文字、イニシャル「H・M」を冠した女性メタルシンガー企画の一人としてシーンに送り込まれた。

そうしたカテゴライズは彼女自身にとって本意なものではなく、男性中心だった当時のロックシーンで好奇の視線にさらされ、今では考えられないがメディアにおいても、ある種の色物として扱われてしまう。

それでも浜田麻里は、デビュー時に与えられたポジションを起点に、アーティストとして経験を重ね自我を胎動させていく。84年のサードアルバム『MISTY LADY』で、自身による作詞と一部の作曲を担当したのを皮切りに、次第に作品づくり自体に関与を強めていった。



そうした中で、HM/HRから派生し音楽性の幅を広げていったのは、決して心変わりではなく、ごく自然な流れだったのだろう。さらに優れた音楽を生み出したい欲望から、国内にとどまらず海外へと視点を移すようになり、アメリカ西海岸の一流スタジオミュージシャンとの作品づくりへと繋がっていく。

「Return to Myself 〜しない、しない、ナツ。」の大ヒット


休むことなく駆け抜けた80年代の音楽活動は「Return to Myself 〜しない、しない、ナツ。」の大ヒットへと結実し、音楽シーンの頂点へと上り詰めた。そんなキャリア絶頂期の90年代半ばから、一転してライブ活動をセーブし、これまでと異なる色合いの音楽性にも果敢に挑戦していった。



2000年代のライヴ活動の再開後は、HM/HR色を再び強め、節目となるアニバーサリーイヤーを飾るに相応しいライヴを披露しながら、コンスタントに作品創りも重ねていった。35周年では以前レポートした日本武道館公演を大成功させて、近年ではデビュー時すら凌駕するハードでヘヴィな音像を呈示するなど、飽くなき挑戦を続けている。

そんな浜田麻里が、時代を超えて現在にいたるまで、揺るぎないアーティストとしての位置づけを、どのように確立したのだろうか。我々聴き手からしてみれば、改めて語る必要のない類まれなる天性の歌声と圧倒的な歌唱力が、主たる要因なのは想像に難くない。HM/HRというジャンルを基軸に、時代や作品によって音楽性をカラフルに変化させながら、至上の歌声を響かせてきた。

そうしたシンガーとしての圧倒的なポテンシャルと同等に、永きに渡る活動を支えた大きな源は、自らの目指すべき姿を貫き通す、比類なき意志の強さにほかならない。

軋轢に挫けずに前へと突き進む、浜田麻里が生み出す音楽への飽くなき拘り


存在自体がどこかベールに包まれ、不思議な魅力にも繋がっている浜田麻里だが、メディアのインタビューやファンクラブ会報でのコメントなど、意外にも他のアーティスト以上の熱量をもって、多くの言葉を発している。

その言葉の端々からは、いかに自らが創り出す音楽に拘りを持ち、強靭な意志を貫ぬいてきたのか、つぶさに感じ取れるはずだ。それは時に彼女に同調しきれず、温度差が生まれてしまった周囲とぶつかり、軋轢を起こしてしまう。

アーティストによっては自らの拘りに蓋をして、妥協を重ねるケースも多いだろう。けれども浜田麻里の発する言葉から、そうした無用な妥協は一切感じられない。

自らが音楽に向き合う姿勢を、一歩踏み込んでまでファンに向けてあからさまに語るのは、彼女が浜田麻里というアーティストを信じてくれるファンを、何より大切に思っているからに他ならない。ファンからしても、自身の音楽に徹底して真摯に向き合い続ける彼女のストイックな姿勢に共感し、信頼し続けているのだと思う。

MARI FAMILYと名付けられた浜田麻里のファンクラブが、彼女の音楽活動に並走して継続しているのは何よりの証だ。ファンとアーティストの理想的な関係性の中で、浜田麻里にとっても、ファンはファミリー同然に信用できる大切な存在であるのだろう。

アーティストとして拘るべき姿勢を大切に守りながら、周囲との軋轢を恐れずに前へと突き進む強靭なる意志。それこそが浜田麻里を孤高の存在に押し上げた所以だ。

“プロデューサー” 浜田麻里が創り上げた40年分の結晶! 最新作「Soar」


そんな浜田麻里が40年目のアニバーサリーイヤーに送り出した作品が、オリジナルアルバムとして実に通算24枚目となる『Soar』だ。オリコン週間チャート初登場5位と、すでに大きな反響を持って音楽シーンに受け入れられている。



35周年の武道館公演の後、スリップノット主催のノットフェストにラインナップされるなど、浜田麻里は挑戦の手を緩めなかった。ところが好事魔多し。コロナ禍のタイミングにぶつかってしまう。

ところがこのダウンタイムは、浜田麻里の音楽活動にとって思わぬ好影響をもたらしたようだ。彼女が自らスタジオワークをこなすことはファンに知られるところだが、これまでにないほどじっくりと、PCやミキサー卓の前で音楽制作に費やす時間を確保できたのだという。

アルバム制作にまつわるすべてにおいて、“プロデューサー” 浜田麻里として自身の裁量で丁寧な作業がなされていった。例えば、有名どころから彼女が見そめた新たな有望どころまで、起用アーティストの選定ひとつから、複雑なパズルを組み合わせていくように細かなディレクションを重ねた。

“シンガー” 浜田麻里としては、自らの歌を完璧にコントロールできる域に達しているため、近作以上に時間をかけて “プロデューサー” としてより広い視野に立ち音楽を創造していった。まさに80年代、90年代に経験した海外でのスタジオワークをはじめ、これまでのキャリアの量、深さがなせる業だ。

そうしたスタジオワークの産物として、キャリア史上1、2を争うハードさとヘヴィネス、複雑さが絡み合う音像が生み出された。歌の凄さは勿論のこと、挑戦的な作風は、彼女の齢をふと頭に浮かべると考えられないほどフレッシュなものだ。大胆な挑戦と深化する円熟味。そんな表裏一体の音世界が織りなす、浜田麻里が魂を注ぎ込み送り出した会心作と言えるだろう。

アーティストとして受ける評価は40年のキャリアにおける何度目かのピークを迎えているが、首尾一貫して彼女自身は何も変わらず、ぶれることもない。シンガー、そしてプロデューサーとして類を見ないほどアンチエイジングで斬新な発想力。浜田麻里がどこまで浜田麻里を超え続けるのか、前人未到の挑戦をこれからもとくと見届けていきたい。

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2023.05.07
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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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